済生会湘南平塚病院の回復期リハビリ特設サイトです。

歩きたい

Walking

歩けなくなる理由

歩けなくなる理由には下記のような理由があります。

麻痺

思うように手足を動かせなくなる。

筋力低下

安静により体・手足の力が低下する。

バランスが悪い

体の柔軟性低下・悪い姿勢によりバランスがとりずらくなる。
→ 例)ちょうちん・パンタグラフのお話

関節が固い

安静により体を動かす機会が減ることで、関節が固くなる。
→ 例)生ラーメンのお話

関節が痛い

以前からある関節の痛みにより、動けない
→ 例)痛みの種類・原因のお話

学習

しばらく歩かないと歩き方を忘れる。
→ 例)歩けるはずが歩けない話

ピッチャーと麻痺の話

一般に麻痺と聞くと想像するのは、手足に力が入らない・ダランダランといった想像をする事が多いと思います。しかし、麻痺という言葉は、力が入らないことを意味しているわけではなく、コントロールが効かないことを麻痺といいます。 前述した麻痺は、弛緩性の麻痺と呼び末梢神経障害・脳卒中などでも起こることがあります。脳卒中で主になりやすい麻痺は痙性麻痺と呼び、動くけれど思うようにコントロールが出来ない事があります。

例)ピッチャーの投球におけるコントロールのお話

ピッチャーは、様々な方向へ球を投げるため、全身の筋力・柔軟性、筋肉の絶妙なコントロールが必要です。脳卒中等で麻痺になると、筋肉のコントロールが不良となり、意に反して手に力が入りすぎたり、勝手に足が曲がってしまったりすることがあります。また、強度の強い運動や、無理な長距離歩行など、行いすぎるとコントロールが困難となり生活がしずらくなります。そのため、リハビリを行う際は、練習の負荷量、運動方向の調整など、適切に配慮し行う必要があります。

生活動作と筋肉の話

普段皆さんが、日々の生活を送る為、様々な動作をします。家事・通勤・通学・仕事(力仕事をしている人、家事など)それぞれ必要な筋肉の量・種類が違います。ここでは、日常で使う動作と筋肉との関係についてお話します。一般的に日常で行う動作は、朝起きた時から順番に、
 

  1. 寝床から起き上がる
  2. 立ち上がる
  3. 歩く


等が一般的ですが、ケガや病気で安静をとっていると、想像以上に体力が落ち、体が固くなります。入院中の患者さんの大半が、骨折・内科的治療後の安静後に起こる想像以上の体力・筋力の低下に驚きます。普通以下になっている時の鍛え方は、かなり弱くなった筋・関節の改善と、合併症(整形・脳・心疾患等)に注意しないと体を壊すことがあります。

起き上がり→立ち上がり→歩く

鍛える筋肉を知る。(筋肉の種類と適材)

身体の筋肉は、大きく分けて2種類(表1,筋肉の種類参照)あります。一般的には、アウターマッスル、インナーマッスルの方が皆様にはなじみがあるかもしれません。

①速筋=白筋=アウターマッスル
 

この筋肉は、重量挙げの選手、競輪選手、短距離走の陸上選手など、 筋肉もりもりの力持ちの方に主についている筋肉で、太くてボリュームがあります。特徴は、一気に大きな力を出すことが出来る「瞬発力」です。 歩行では、まず「椅子からの立ち上がり」の動作に使います。重量挙げには、少ない回数、高負荷、短時間で行う必要があります。

 

② 遅筋=赤筋・インナーマッスル
 

主にマラソン選手が使用している筋肉です。役割としては、関節の微調整、姿勢を維持する事にも関与し、筋肉は細いもののとても大切な役割を担っています。日常生活では、先程の重量挙げ選手の筋肉よりも、マラソン選手の筋の方が多く使われています。歩行では、マラソン選手の筋が減少すると姿勢不良⇒バランス不良となり転倒しやすくなります。この筋を鍛えるには「低負荷、高頻度、長時間」で行う必要があります。

アウターマッスル アウターマッスル
インナーマッスル インナーマッスル

歩行に関して

足が弱く杖を使う場合は、杖に体重を乗せて歩くため、疲労するほど杖に体重を乗せて歩くようになります。その為、歩く量を増やしても、本当に足の弱っている場所は、一向に強くなりません。当院のリハビリでは、起立・歩行などの訓練に併せ、個別に弱い個所を集中的に練習します。

腰痛に関して

よく腰痛の患者さんが、勘違いしている内容に「腰が悪い人は腹筋を鍛えると良くなる」と思っている方がいますが、仮に腰痛の方が下記のような方法で腹筋を鍛えると、腰痛を悪化させる可能性があります。
杖をついて歩く人

腰痛に関して

よく腰痛の患者さんが、勘違いしている内容に「腰が悪い人は腹筋を鍛えると良くなる」と思っている方がいますが、仮に腰痛の方が下記のような方法で腹筋を鍛えると、腰痛を悪化させる可能性があります。

お腹の筋肉は大まかに3層構造で、表面から①腹筋(重量挙げ選手の太くて瞬発力(強い力)の筋肉)、②内外腹斜筋・腹横筋(マラソン選手の細くて持久力のある筋肉)と別れています。腰を強くしてくれるのは、マラソン選手の筋肉が重要です。

インナーマッスル インナーマッスル

上記の筋肉は、体格などの個別性・やり方の違いによって効果に差が出やすく、練習するのにいくつかコツが必要です。そのため、それらのコツをリハビリでお伝えします。

バランスと体幹アプローチの関係性と重要性について

歩行におけるバランスは足だけではなく体幹も重要です。ここでは、歩行バランスを向上させる為、なぜその様なアプローチをする必要があるのか?お話します。

身体のバランスを地震の時のビルに例えると・・・

地震が起こった際「しならないコンクリートで出来たビル」は、大きな揺れを吸収できず、弱い箇所で折れてしまいます。しかし、「しなる鉄骨のビル」は、建物全体が揺れてくれることで地震の力を逃がし、倒壊を免れることが出来ます。

歩行中は、常に揺れる地震と同じ状態です。人間をこのビルに例えて考えてみると、コンクリートビルのように、全身の関節が固い人は、動く関節が少ないため揺れる力を吸収できず不安定となり転倒するリスクが高くなります。しかし、しなる鉄骨のビルのように、各関節が柔らかい人は、足元からの揺れに対し、足の関節(足・膝・股)、体幹(脊椎の関節)等のたくさんの関節を利用しバランスを取ることが可能な為、安定します。

では、バランスを安定させるにはどうすればよいのでしょうか?洗濯物を干す物干し竿(下図参照)を床に立てている状態をイメージしてください。物干し竿が倒れそうになった際、床に近い方を持っていると、大きな力が必要となります。しかし、竿の上部を持っていると、力は弱くても容易にバランスを修正できます。

歩行中のバランスも同様で、体の下の方、つまり足関節や股関節でバランスを修正するよりも、体の上の方にある体幹(脊椎)を動かし、小さな力で重心をコントロールしてバランスを取るほうが大きな力は必要なく容易に可能です。

6体幹 (胸郭・腰椎)と歩行のバランス

転倒と重心の関係について
人の重心は、下腹付近(骨盤内仙骨やや前方)にあると言われています。歩行時における重心は、前から見たら、体の真ん中にあることが望ましく、横から見たら、足くるぶしよりも少し前方(踵とつま先の間)にある方が歩行は安定します。

重心が踵ばかりに偏ると、踵の骨の形上、ボールに乗っているようになり、バランスは不安定になります。
 

重心は、体の姿勢によって左右されます。猫背(胸椎の屈曲)が大きいと、歩行時に重心が後方となり転倒しやすくなります。猫背の原因は、胸郭(アバラとアバラがある脊椎部分)の柔らかさが関係します。胸椎の柔軟性によっても歩行バランスが向上します。

猫背の原因、胸郭について

胸郭は大きく分けて「胸椎」「肋骨」から形成されています。主な機能は

①息を吸うとき=上方に膨らむ=外肋間筋収縮
②息を吐くとき=下方にしぼむ=内肋間筋収縮

横からアバラ(肋骨)の動きを見ると下記の様な動きをしています。

インナーマッスル インナーマッスル

息を吸ったり吐いたりしている時の肋骨の動きは「提灯(ちょうちん)」を伸ばした時、縮めた時のような動きをします。骨組みが肋骨で肋間筋が紙の部分に該当します。息を吸う時は上下に伸ばした状態、息を吐くときは縮めた状態です。

胸椎(胸郭)の動きと筋肉の状態の関係

胸椎の可動性は、いくつもあるアバラ骨全体の動きに左右され、アバラとアバラの間にある肋間筋が、固いと胸椎(胸郭)の可動性が悪くなり、猫背となり姿勢が悪くなります。肋間筋の筋繊維の方向は、✖印のように(下図参照)クロスしているため、電車の屋根についているパンタグラフと同様の動きをします。その為、肋間筋が固くなると体が反りずらくなってきます。胸郭は、肋骨と肋骨の間の肋間筋の柔軟性を向上させると、体を反らせる柔軟性により猫背の改善が出来ます。

では、どのようにして胸郭の柔軟性をよくするか?
ここで、背骨全体(脊椎)に目を向けてみます。下図をご覧ください。これは「頸椎(首)」「胸椎(胸)」「腰椎(腰)」に分かれている脊椎の「曲げる・伸ばす」「捻る」といった動きについて、どこの部分がどれくらい仕事をしているか大まかにを示したものです(下図参照)。これを見ると、胸椎は回旋動作を得意としており、回旋の柔軟性が、体を反らす柔らかさ(猫背ではない良い姿勢)は向上しバランスも良くなります。次にどのようにすれば筋肉は柔らかくなるのか?

一般的に、運動不足などで、筋肉の収縮回数が減少すると、筋肉が細くなる以外に、血流不足から筋肉がサビついた自転車のチェーンの様な状態となり動きが悪くなります。

その様な場合、弱い強さで、回数多く行う運動(低負荷高頻度)を行うことで、筋肉はポンプの役目をして血流量が増加し、正常な収縮ができるようになります。肋間筋(アバラとアバラの間の筋肉)の柔軟体操の方法は、上部体幹を左右に繰り返しひねる運動を行うと、クロスしている筋繊維が交互に収縮・伸張され、繰り返し行うことで筋肉のポンプ作用で血流も増加し、柔軟性も向上し、体が反りやすくなります。 

次に、胸郭が固くなる原因の一つである、お腹の筋力低下の原因も、運動不足・加齢があげられます。人間を横から見たところを、右図を参照にイメージしてください。支えるものとしては後ろ側には脊椎がありますが、前側はお腹の筋肉しかありません。このお腹の筋肉が無くなると以下の現象が発生します。

お腹の筋肉がないと、体幹(脊椎)が屈曲し股関節も曲がってしまいます。股関節が曲がると、重心が前方に移動し、前方に転倒しそうになる為、無意識に膝を曲げて重心を中心に持ってこようとします。
そのような姿勢で歩くことで膝関節を痛める原因になります。また、脊椎の可動性も失われ「猫背」を助長し、頸椎や肩甲骨の可動性も悪くなり(写真)、肩関節の負担が多くなるため、肩関節周囲炎(40肩、50肩)を招きやすくなります。このように、一般的にお腹の筋肉が弱ってくることにより、首・肩・膝を悪くする可能性があるため、お腹の筋肉をつけて胸郭を柔らかく保つことは、歩行バランス以外にも、整形外科的な疾患の予防に効果があると言えます。

ラーメンと関節の固さの話

筋肉は関節をまたぐようについています。その筋肉を使わないと血流が悪くなり、肩コリのように固くなると関節の動きも悪くなります。生ラーメンで例えると、筋肉を使用し血流豊かな筋肉は、ゆでたての柔らかいラーメンです。しかし、加齢や病気で安静にしていると、筋肉の血流が悪くなり固い乾燥ラーメンのようになり、関節の動きを悪くします。

人体の骨の数は、赤ん坊=約300個、大人=約200個です。大人になるにつれて、骨同士がくっついたりして骨の個数は減少します。その骨同士をつなぐ関節の数は、約260ヵ所となっています。関節の種類は様々ありますが、基本的には筋肉、関節をまたぐ靱帯、骨等で構成されています。

関節が固くなる時は、筋肉・靱帯・骨の順番で固くなっていきます。一般的に、運動不足などで体が固いと思う場合、筋肉がその主な原因となっていることが多いです。運動不足で主に固くなりやすい関節は、主に背骨全体と股関節です。

腰痛の人は、悪くなった腰の一部が一番の悪者に見えます。実際は悪くなった関節の上下の関節の動きが固くなっていることが問題です。

リハビリでは、使われなくなった筋肉を使用することで血流を改善し、乾燥ラーメンからゆでたてラーメンのように、柔らかい状態にして、関節の動きを良くします。それによってバランス不良の改善、姿勢の改善、歩行の安定化につながります。

乾燥ラーメン⇒ゆでたてラーメンにするリハビリの

天井から足を写真のようにロープでつるします。こうすることで、下肢にかかる重力を除くことができ、負荷の少ない運動を回数多くこなすことが可能となります。すると、筋肉のポンプ作用により、滞っていた血流は改善し、使用されていなかった筋肉も使用できるようになり、筋力の改善が早くなります。

(インソール)
麻痺等で、練習を行っても歩行中の不安定性、歩容(見た目)が解消しないケースも見られます。その際は、スタッフが、靴に入れるインソールを個人に合わせ製作し、ハード面でのアプローチも行います。よく靴屋さん・装具屋さんでも製作していますが、大きな違いは靴屋さん・装具屋さんが作るインソールは、一般的に静止した状態で作りますが、当院のインソールは患者さんが歩いている状態を見ながら作ります。そのため、手間暇はかかりますが、患者さんの障害に合ったインソールが完成します。

インナーマッスル インナーマッスル

痛みについて

関節などに痛みがあると、痛みを回避するために歩行が不安定になります!痛みがある方で歩行が不安定な方は、まず、痛みを取ることも大切です!

痛みの種類について

「痛み」といっても、様々な痛みがありますがここでは、歩行に関係した痛みについてお話します!

痛みの種類には大きく分けて3つあります。

インナーマッスル

「ズキッ」という痛み

インナーマッスル

「ズキッ」という鋭い痛みは、組織(皮膚、筋繊維、骨、靱帯や関節包といった軟部組織)の損傷・炎症の可能性を意味し、身体に異常が発生していることの表れと言えます。いわば、緊急信号ともいえ、一般的には、筋肉痛、肉離れ、骨折、捻挫、関節炎、腱鞘炎などがあげられます。これらのズキッとした鋭い痛みは、患部に対し安静を取ることが大切です。

「重だるい・突っ張る」痛み

「重だるい」という鈍い痛みは、主に筋肉における血流不良による可能性が考えられ、一般的には肩こりが例としてあげられます。無意識のうちに持続的に筋肉に力が入り、その状態が長時間続くと血流不足が生じ、重だるい鈍痛を招きます。筋肉は、数多くのアクチン・ミオシンと呼ばれる繊維が縮んだり伸びたりして収縮します。例えるなら、オイルが切れたサビついた自転車のチェーンと同様です。

インナーマッスル

それにより、筋繊維同士の滑走はスムーズではなくなり、力の出にくい筋肉となってしまいます。一時的な改善方法としては、マッサージや温めることにより、血流が良くなり、オイルが良く行き届いた自転車のチェーンの様に症状が改善します。根本的には、血流が悪くなる原因を治さなければなりません。

「びりびり、ピリピリ、ズーンとするような」痛み

「びりびり、ピリピリ、ズーンとするような」という症状は、主に神経に関係する障害で見られます。正座後の足がしびれ、腰痛と一緒に発生するお尻付近の疼痛(坐骨神経痛)も神経症状の一つです。

また、太ももの後面~ふくらはぎにかけて、殿部と同様に突っ張るような痛みとして出現する事が多く見られます。これらについては、腰等の脊椎に起因する事が多く、医療機関など見てもらった方が良い事があります。

当院リハビリテーションの「痛み」に対するアプローチ

当院リハビリテーション技術科は、腰痛・膝痛・肩痛等多くの整形外科疾患の患者さんがリハビリに来られ、疼痛を伴う患者さんを対象に長年リハビリを行っております。脳卒中をはじめ、手術により入院する患者さんの中には、元々腰痛・膝痛等の整形外科疾患をお持ちの方に腰痛等の「痛み」があると、歩行を不安定にする等、骨折・脳卒中の回復の妨げになることが多々見られます。

そのために「痛み」を正確に把握し、痛みに適したリハビリテーションを行うために、より高い知識と技術が必要となります。

「痛み」を伴う入院に対する当院リハビリアプローチ

当院リハビリテーションでは、いままで培ってきた知識と技術により、弊害となる「痛み」に対し除痛を図り、効率的にリハビリテーションを進めております。

学習について

リハビリに関わる学習

現在まで行ったことがあるスポーツ・書字・料理を久しぶりに行うと、以前と同様にすぐに出来るでしょうか?通常は、しばらく昔の記憶をたどりながら、昔の動作を行い、いきなり前回の力を出し切ることは難しいと思います。

怪我・病気をした後も同様の現象が起こります。患部を守るために安静が長引くと、歩き方など忘れることがあります。まさか歩くことを忘れるなんてと思いがちですが、数日歩かないだけで、久しぶりに歩くと自分の足ではないような錯覚に陥る事があります。脳卒中等の病気で麻痺などをおこすと、感覚もいつもと変わる為、かなり気を付けなければ転倒の恐れもあります。思うように体が動かない際に、リハビリでは各個人に合った動かし方、練習方法を、お伝えさせて頂きます。

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