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リハビリ技術科

リハビリの種類 作業療法とは

当院の作業療法

当院の作業療法は、食事・トイレなどの練習の他に料理・買い物・復職・自動車運転の評価など生活関連動作についても支援しています。また、リハビリの内容に趣味活動などご本人が好きな活動を取り入れています。アプローチの1例として、患者さんの生活歴を参考に練習(例:治療課題として料理・カクテル作り等)を展開し、従来よりも魅力的で効果のあるリハビリを行っていきます。

人が行動を起こす仕組み

人のからだは、外から入ってきた刺激を脳で情報として受け止め処理して動きます。

1、 刺激を受ける(入力)

外部から刺激を受ける→体から脳へ・・・

2、 情報処理

脳が感覚情報を処理

3、 行動する(出力)

情報処理の結果、脳から身体に指令がでる。

空き缶につまづく時の感覚の流れ

視覚 缶を認識
聴覚 缶の音を確認
固有受容覚 筋肉や関節に感じる
触覚 つま先で缶を感じる
前庭覚 平衡をとる

1.種々の感覚刺激を受ける
2.脳が処理「缶だ!」「つまづく」⇒バランスをとれ~
3.筋肉の収縮=踏みとどまる

このように、人が行動をおこすためには、視覚、聴覚、触覚、固有受容覚、前庭覚とそれぞれの感覚が統合されて適切な行動が選択されます。

患者さんで考えてみると

視覚・聴覚

目の前に缶があり、当たった音はわかるけど、体が思うように動かなくて、倒れてしまいそう

前庭覚 ふらふらしてバランスが取りにくい 
固有受容覚 体の麻痺により筋肉や関節に感じる感じがわかりにくい 
触覚 感覚障害で、感じにくい 



1.種々の感覚刺激を受ける
2.脳が処理「缶だ!」「つまづく」⇒バランスをとれ~
3.筋肉の収縮=踏みとどまる

患者さんは、視覚、聴覚で分かっていても、触覚、固有受容覚、前庭覚の感覚がうまく機能していないため、感覚の統合がされにくく、適切な行動ができません。そのため、転倒につながってしまいます。

それぞれの感覚を統合させる関りが必要!
(食事の練習であれば、味覚・嗅覚も含まれます)

感覚を統合しやすくするコツは・・・
患者さんが、得意・もしくは好きな活動で練習する事です。

「好きこそ物の上手なれ」とことわざであるように、好きなことを行う時は誰しも、熱中して行います。また、「時間を忘れて没頭する」ときは、時間の概念も忘れるほど、集中しており、どこをどう動かして・・・など考えないで体を動かしていますよね。このような時は、それぞれの感覚をより統合して体が動いている時なんです。だから、感覚を統合させる関りを行う時は、患者さんが好きな活動を行う方が、よりリハビリ効果を出しやすくなります。

高次脳機能障害で考えてみると

物事を考えたり、覚えたりする能力などの障害

感覚統合はピラミッドのように発達されています。感覚入力してからの発達は四段階あり、より物事を高度に考える高次脳機能(物事を考えたり、覚えたりする能力)は第四段階目の最高位で獲得されていきます。

脳の病気で高次脳機能障害が表出した場合、通常、リハビリでは、ピラミッドの第四段階目に着目して、能力の再獲得をしていきます。第四段階目のみの関りでは、下の土台がぐらついたまま、積み木が積みあがるように能力を再獲得していくため、うまく積み木が積みあがらず、高機能機能の再獲得が十分に促せない場合があります。また、ちょっとしたことで乱れやすく運動企画や注意の集中、学習能力に影響を及ぼします。

ここがポイント

当院の作業療法では高次脳機能障害に対し、直接的に第四段階目に関わることに加え、しっかりとした土台を作るために、下支えする「聴覚」「前庭覚」「触覚」「固有受容覚」「触覚」「視覚」の感覚統合を促し、積み木を一段一段確実に積み上げていく関りを行っております。

エピソードを踏まえた作業療法の紹介

”着物を着て歩きたい”の関りを基に作業療法を紹介します。”歩く”は主に理学療法士さんが行うのですが、「もう着物を着て歩けないね」の訴えを聴き 何とかできないかな・・・ここから作業療法は”着物を着て歩く”に関りをもちました。

まず、着物を着て歩く時の特徴をあげてみると和服が、はだけないようにナンバ歩きであること綺麗な歩き方として内股ぎみに足を運ぶことでした。それで実際に歩いてみると、ナンバ歩きは長年の経験から、麻痺している足でもOK!※ナンバ歩きとは、右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して前に進む歩き方です。でも・・内股で足を運ぶと、装具を履いている為すぐに床につま先が引っ掛かって、つまづいてしまった。どうしてもこの方法だとつまづいてしまう。

なんかいい方法はないか。ん!まてよ。昔の人はみんなナンバ歩きだったはず。なら、昔の人が合戦で戦う時もこんな上品な足の運びで戦える?そんなことはないはずだ。次は、日本古武道の足の運びを調べることに。姿勢を安定させ、なおかつ動きやすい方法として撞木(しゅもく)立ちという立ち方を行っていた。撞木立ちは、足部は外側に向けることで、合戦の時の足のつまづきを防止し、足面が広くなる為、踏ん張りがきくとのことであった。足の運びは、ナンバ歩きとのこと。これだ!

早速、患者さんの練習実施。足の運びはナンバ歩きで、麻痺側足だけ外向きに床に接地する工夫を行うと・・・みごと!着物がはだけることなく、麻痺側足もつまづくことなく歩くことが可能になりました。このように、作業療法は、患者さんが”してみたい”活動で動きの分析をするとともに、その活動にたずさわっている文化や習慣、その時代背景まで掘り下げて考えていきます。そして、その内容を患者さんのリハビリに活かしていきオーダ―メイドの練習を展開しています。今回は、”着物で歩く”の活動を元に、時代をタイムリープした関わりでした。

撞木 撞木

作業療法の関りの例(1) 職歴を活かす

70歳代の 女性 脳血管疾患でリハビリ 職歴:スナックのママさん

考えることや覚えていることについて、(高次脳機能について)どれだけできるか調べようとしたのですが・・・「私そんなことはしたくないわ」高次脳機能の検査は実施できず。ご本人さんも、警戒気味で仲良くって感じではない。そこで‼グラスと、氷、マドラーを用意ノンアルコールカクテルを作ってもらう。 さすがママさん、手際よくつくり、上機嫌!それからのリハビリは、スムーズにできるようになりました。作業療法は得意な活動を通して、物の距離感や手順が、しっかりできることを確認。ご本人さんの心理的負担を少なくした関りを行っています。

作業療法の関りの例(2) 趣味を活かす

70歳代の 男性 脳血管疾患でリハビリ バンドマンで、ウクレレの演奏者

患者さんの訴え少し指が曲がるくらいだけで、指が動きにくい。どうしてもウクレレが弾けるようになりたい。出来るかどうかではなくて、その練習をしてほしい。そこで‼作業療法にてウクレレ演奏を取り入れ、手指機能改善
弦を押さえるコツは、患者さん本人が一番わかってるはず・・・それに賭けてみて積極的にリハビリを行う事で、演奏できるようになりました。

作業療法の関りの例(3) 趣味を活かす

70歳代の 女性 脳血管疾患でリハビリ 長年、茶道を行っていた。

患者さんの訴え右手や指を動かしてる感じや、力の加減がわからない。足をついてる感じがしない。また、茶道がしたいな・・・装具つけちゃうと、がに股歩きになっちゃう。着物は着れないね。 でも、また着たいな・・・そこで‼

手の練習に、茶道の内容を取り入れて実施。手の練習に、茶道の内容を取り入れて実施。

手:茶道の経験を活かすことで、指の力の加減がわかるようになり、椅子に座って茶道が出来るようになった。

足:日本古来の歩き方を取り入れることで、がに股歩きにならずに着物をきて歩けるようになった。

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